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2017年6月14日 (水)

夢の現象学(123):日本人初の月着陸宇宙船飛行士として出発する前夜の巻/紀元5世紀の他者に成る夢の実例を発見の巻

■2017年6月13日。朝6時。夢をみた。日本人初の月着陸宇宙船飛行士として、月へ出立する前夜だった。
 アメリカらしき基地内で、広いホテルのような部屋に泊まっていた。それまで色々あったようだが、例によって思い出せない。とにかく、あまり眠れないままに朝になってしまったので、早目に宇宙船に乗りにいくことにした。
 途中は、係官らしい地味な男性が同行していたようだった。
 私は(上に宇宙服を着るためか)軽装だった。薄暗い長い廊下を通っていくと、レストランになっている一画に出た。最初のテーブルに、白人の男女が席に着いていた。同行の係官が、同乗予定の先輩宇宙飛行士だと教えてくれた。どうやら同じテーブルで食事を取ることになっているらしいと判断して、軽装を気にしながら近づいて、「I'm Tsuneo Watanabe」とか、たどたどしい英語で自己紹介をする。男の方が何か答えたが思い出せない。女の方が無言なのが少し残念だった。
 二人ともかなり若い。私も同年輩の若さということになっていたようだ。
 そのうち目が醒めた。
■月着陸宇宙船飛行士になって出発する前夜などと、トンデモない夢を見たものだ。そのような願望は全くないし、宇宙飛行士になるなど考えただけでも裸足で逃げ出したくなる。
 ニールセンの、前日と7日前の現実の記憶が夢にでることが多いという実験結果を踏まえて、この一週間ばかりの出来事を思い返してみる。
 前日(月)。一日家にいて、CITIの倫理教育プログラムをネット上で受講し、クイズなるものに回答し、受講証明書を首尾よくゲットした。受講は昨年、科研費申請に加わるのに必要だと自治医大の方から言われて、初めて受けてこれが二度目だ。専任の頃にはこんなものはなかったから、小保方事件の御蔭というわけだ。迷惑な話だ。とはいえ、やってみると結構おもしろいものだ。いずれにしても問題には月面宇宙船の話など出てこなかった。
 2日前(日)。久しぶりにスポーツクラブで泳いだ。
 3日前(土)。本郷の臨床心理関係の研究会で、田中さん植田さんと共訳した『現象学的心理学への招待』(ラングドリッジ著、新曜社)の読書会をやると言われて、出席。田中さんはわざわざドイツから、植田さんも岡山から、スカイプ参加だった。
 4日前(金)。夕方まで世田谷の家にいて掃除や洗濯をして、2時間以上かけて帰ってきた。
 5日前(木)。駒場の「障害と科学技術」ゼミに研究生として出席。世田谷の家に行って泊まる。今、思い出したのだが、途中でツタヤに立ち寄って、スターウォーズシリーズ「帝国の逆襲」というDVDを借りて見たが、宇宙船がやたらに出てくる。関係があるとしたらこれかもしれない。
 それでも、日本人初の月着陸宇宙船飛行士の出発前夜、などという設定には、心当たりがない。
 このような夢を見ると、並行世界で別な運命を生きる別な渡辺恒夫の記憶をのぞき込んだ、という気がどうしてもしてくる。
 もう一つの可能性が、意識下の別人格説だ。深層心理学説の一種だが、現象学とは折り合いが悪い。無意識を現象学するとは自己矛盾だからだ。それでも果敢に無意識の現象学に挑戦した例を、たしかルドルフ・ベルネの論文で読んだことがあるが、あまり印象には残っていない。
:
■モーリーの未訳の本に、5世紀の「他者になる夢」の実例を見つけるの巻
 その、科研費「夢の現象学」の第一回研究会が、先月末に自治医大であり、重要文献として挙げられたAlfred Maury:"La magie et l'astrologie, troisieme ed, revue et corrigee,"(Pais: Librairie Academique, 1868)を、研究代表者の武内大教授から借りて帰った。Mauryとは、フロイト以前の夢研究の大家で、夢の瞬間生起説で知られている。
 そして早速、他者に成る夢の実例を発見した。以下にその部分を紹介する。
 西暦5世紀の末と言えば、異教の禁止によって女神キュベレーの神殿が完全に放棄された時代であるが、祖国(フリギア)の信仰に忠実な哲学者ダマシウス(Damascius)は、同行者一人のみを伴って、カロンの門と呼ばれている地底の洞窟へと降りたのだった。人々の言う、そこへ侵入する危険をものともせずに。彼の報告によると、正気かつ安全に洞窟から脱出したのであるが、家に帰ってまもなく次のような夢を見たという。その夢の中で彼は、フリギアの男神でキュベレーの愛人であるアティス(Atys)であり、この神に奉納された祭礼の供宴に立ち会っていたようであった。(p.236)
 この、5世紀の哲学者の夢の例を読んで、古代人は自己と他者の境界が不分明だったからたやすく他者と融合したのだろう、といった解釈が出てくるかもしれないが、それは現象学的ならざる解釈である。夢の中での他者の融合が可能であるためには、夢世界とそして現実世界において、体験世界の志向的構造がどのようになっていなければならないかを、解明することこそが、現象学の仕事なのだから。
+++【ブログの主の関連する新刊】『夢の現象学・入門』(渡辺恒夫著、講談社新書メチエ、2016年7月刊)+++

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