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2016年11月の記事

2016年11月19日 (土)

夢の現象学(111)夢の中での想起ふたたびの巻/フッサール心理学(41):『心の科学史』合評会の案内

◼️2016年11月19日。明け方、夢を見た。

 K教授(故人でユング派の総帥)を囲むセミナーか何かの会場にいた。

 私は、スイスのユング研究所で一夏を過ごしたことになっていて、そのような記憶があった(事実ではない)。セミナーでは、参加者の誰かがユング研究所に滞在する予定らしく、その話題で盛り上がっていた。「ベッドを持参した方がいいんだろうか」といったことを、K教授だか誰かだかが、話していた。

 そこで夢の中で思い出したのは、K教授がスイス留学中に、ベッドを買うお金がなくて床にじかにマットを敷いて寝ていたという、何かの本で読んだ逸話だった。

 私は自分の記憶に基づいて、「絨毯敷きの部屋があるじゃないですか。この六畳一間くらいの」と言ってやった。実際、細長い絨毯敷きの部屋が光景として現出した。そのうちに、ユング研究所では実際にどうだったかを思い出し、「みなさん、部屋ごとに置いてある布団を敷いて寝ていましたよ」と言ってやった。事実、研究所の幾つかの部屋は、日本旅館のように畳敷きで、部屋の隅に布団が隅に重ねてあり、夜にはそれを敷いて、一部屋数名の割合で寝ていたのだった。その折の光景が思い浮かんだ(もしくは過去へ戻ったと言うべきか)。「ただし、ボクが行ったのは夏だったから。夏だけのことかもしれないけど。」私は続けた。K教授の直弟子たちの間にあって、自分のユング研究所での実体験を話せてよかったと思いながら。(朝7時50分)。

■この夢の元は、三十代だった頃に京大教育学研究科に内地留学していた時にあったセミナーらしい。内地留学も終わりの頃の冬に、慶応の小此木啓吾氏(故人)を呼んで、どこかの畳敷きの会場でセミナーをやったのだった。当時感じていた、K教授の「直弟子」たちへの複雑な思いが夢にも出ている。

 もっとも、収穫も多かった。その時知り合った「直弟子たち」の中で、D3から途中で助手に就いた森岡正芳さんや、まだM2の院生だった高石恭子さんとは(二人とも臨床心理の大家になっていられるが)、今でも研究上の交流があるのだから。

 けれども、この夢を書く気になったのは、夢の中の記憶(現実とは対応しない架空の記憶)を、「想起」する場面があったからだ。

 夢の中では想起することはできない。なぜなら、過去の想起は即、過去への時間旅行になってしまうから。これが、『人はなぜ夢を見るのか』(化学同人)でも、『夢の現象学・入門』(講談社)でも、堅持して来た現象学的立場だった。ところが、この夢では(この夢でもと言うべきか)、タイムトリップにならずに、過去想起がなされているように見える。

 とはいえ、上記に「その折の光景が思い浮かんだ(もしくは過去へ戻ったと言うべきか)」と書いたように、思い浮かんだだけなのか、それとも過去へ一瞬、戻ったのかは、はっきりしない。なぜはっきりしないかと言うと、現実世界の中ならば、現実の知覚と想起された光景とは、画然と異なる。ところが夢世界の中の現実の知覚(?)と、想起された光景とは、それほど明確に違っているようでないからだ。

 あるいは、現実世界の中では知覚と想起とを、現在時の中で比較できるから、差異は歴然としているが、夢世界の中で両者を比べようにも、両者とも夢想起の中で比較する他ないから、差異がはっきりしなくなるだけかもしれない。「現実vs想起」ははっきり違いが分かるが、「想起vs想起の中の想起」では、分からなくなる、ということかもしれないのだ。

 夢を想起データとしてだけ扱っていては、この困難は超えられない。明晰夢の中で観察をすればどうだろうか。明晰夢を、夢の中での現象学的観察に使うというアイデア。夢の中で夢の現象学的研究を行うというのが、それこそ私の夢だったのだが。

■『心の科学史』の合評会の詳細が決まった。案内を載せておく。

「心の科学の基礎論」研究会( 第76回)のご案内

表記の研究会を、<『心の科学史』(高橋澪子著、講談社学術文庫、2016)合評会>として、下記の通り開催いたします。奮ってご参加下さい。

【日時】2016/12/3(土) 午後1:30~5:30(午後1時開場)

【場所】明治大学駿河台キャンパス研究棟2階第8会議室

http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

・趣旨 本研究会の発起人の一人である高橋澪子氏の本著書は、1999年に東北大学出版会から刊行されてのち絶版になっていましたが、このほど講談社学術文庫版http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062923835として復刊されましたので出版記念の合評会を開催します。

・司会 渡辺恒夫(東邦大学/明治大学、心理学)

・書評担当1 渡邊芳之(帯広畜産大学、心理学)

発表要旨: 本書は科学的な心理学の現在につながる歴史の中から「前近代のヨーロッパにおけるプシュケー論とプネウマ論の変遷」と「十九世紀ドイツの科学思想とヴント心理学の論理」の2つのテーマを取り上げて詳細に分析した大著であり,他に類を見ない偉大な業績と言える。しかし評者はそうした「本論」よりむしろ「序説」や「補説」,あるいは(本論を超えるボリュームを持つ)脚注の中にやや断片的に述べられた著者の心理学史研究への私見,心理学史観,心理学観,研究観,また心理学者としての人生観に興味をひかれ,強い感銘を受けた。発表では著者の考えが最も直截に述べられた「序説」を中心にそうした著者の観点をいくつかの主題から整理するとともに,それらと特にこの本が書かれて以降の心理学史研究との関係について考えたいと思う。

・指定討論:溝口元(立正大学、科学史)

・書評担当2 溝口元(立正大学、科学史)

発表要旨: 『○○の科学史』と題する著作には、しばしば“古代から現代まで”といった副題がつく。実際、旧版が刊行された1999年には『光合成と呼吸の科学史 古代から現代まで』があり、今回の学術文庫版が出版された今年は『心臓の科学史 古代の「発見」から現代の最新医療まで』が出版された。しかるに本書の副題は“西洋心理学の源流と実験心理学の誕生”なのである。ピンポイントで心理学の源流とエポックを扱う本書は、心理学における歴史の“通時性”を考えさせてくれる。また、アリストテレス自然学、霊魂論の正確な理解と展開という逃げ出したくなるような課題、通常、心理学史ではあっさり実験心理学の祖といってしまうヴントの分析から、心理学は哲学よりも生理学からの独立であるという大変エキサイティングな捉え方も話題になろう。さらに、一体、誰を読者対象としているのだろうかという素朴な疑問や清涼剤としての著者の回想録あたりもネタにしたところである。

・指定討論 渡邊芳之(帯広畜産大学、心理学)

・全体討論

・誰でも参加できます。申し込み不要、無料です。

・注意!研究会はお互いに学び合う場です。自説を声高に一方的に主張し続けるような行為は、迷惑行為に当たりますので、ご遠慮下さい。

・「心の科学の基礎論」研究会 http://www.isc.meiji.ac.jp/~ishikawa/kokoro.html

世話人会:

荒川直哉 (NPO) 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(naoya.arakawa[アットマーク]nifty.com))

石川幹人 明治大学情報コミュニケーション学部(ishikawa[アットマーク]kisc.meiji.ac.jp)

田中 彰吾 東海大学 (shg.tanaka[アットマーク]gmail.com)

水本正晴 北陸先端科学技術大学院大学(mmizumot[アットマーク] hotmail.com)

渡辺恒夫 明治大学/東邦大学(psychotw[アットマーク]env.sci.toho-u.ac.jp)。

 

2016年11月18日 (金)

夢の現象学(110):地震の夢から醒めて現実の地震の影響を確認したと思ったらそれも夢だったの巻

■11月2日 明け方、夢を見た。屋外か体育館のような広い屋内にいた。前の方は憶えていないが、とにかく、地震が起きたのだった。小刻みの縦揺れだった。
 こんな広い場所でも感じるのだから、かなり強いのだろう、と思った。
 そして、目が醒めた。
 夢の中の地震は、現実の地震の体感が原因で生じたのかもしれないと考えた。事実、そのように確認できた。N教授がいて、何か話していたが、地震は現実に起こったのだということだった。
 そして次に、本当に目が醒めた。
 目覚めた直後は、地震の夢の原因が現実の地震であることを、ほぼ確信していた。さらに確かめるべく、ベットの脇のスマホを取り、地震情報をチェックした。
 ない。地震は現実には起こっていなかったのだ。
 地震の夢の原因が現実の地震の体感にあることを確認したと思ったら、それも夢だった、というオチだった。
■考察すると‥‥
 N教授は、前日の家族との会話の中に出てきた。また、小刻みの縦揺れ地震は、一週間ほど前にあったと記憶している。前日と一週間前が、記憶が夢に取り込まれるピークだという、ニールセンの実験結果に、概ね合ってはいるのだが。
 それにしても、外部刺激が夢にそのまま取り込まれることは、滅多にないことなのだ。それは、偶々前日読んだ、"Dreaming and the brain: from phenomenology to neurophysiology", by Y. Nir & G. Tononi (Trends in Cognitive Sciences, Vol 14(2): 88-100), p.95, にもある通りだ。
 というか、「偶々」ではなく、まさに前日読んだ説を確認するような夢を、わざわざ見たような気がするのだが。 
+++【ブログの主の関連する新刊】『夢の現象学・入門』(渡辺恒夫著、講談社新書メチエ、2016年7月刊)+++

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電子ジャーナル:こころの科学とエピステモロジー

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