« 夢の現象学(87)/フッサール心理学(30):また空中歩行したの巻/フッサール他者論から可能世界論への巻 | トップページ | 夢の現象学(88):今朝見た夢は現実世界の平行宇宙に似ていたの巻 »

2015年8月 3日 (月)

フッサール心理学(31):ジュリアン・グリーンの異色作 "Si j'etais vous ..."(もしも私があなただったら)の序文に幼少期の自我体験を見つけたの巻

■このところ、ジュリアン・グリーンの"Si j'etais vous ..."を、原書で読み進めている。近くの公立図書館で、偶然見つけた本だ。

 アマゾンで検索すると1979年に翻訳も出ているようだが、古書の価格が9千円もするので、やむなく、さび付きかけたフランス語を思い出しながら、毎日少しずつ読み進めている。

 この小説の着想が、幼少期の自我体験、それも「なぜ私は他の人間ではないのか」という意識の超難問の体験にあることを、作者自身の序文で知ったからだ。ジュリアン・グリーンは、30年以上前に、キリスト教文学選集の中で中編『地上の旅人』(「地を旅する者」という訳もある)を一読し、深い印象を受けたのだった。

 本ばかり読んで育った若者が、大学に入るためにひとりで町へ出るが、初めての現実世界との接触に耐えられず、ドッペルゲンガー(またはイマージナリ・コンパニオン)に導かれて崖から身を投げてしまう、というあらすじだ。アマゾンブックレヴューにも出しておいた(『現代フランス幻想小説傑作選』という本へのレヴューとしてだが)。
 タイトル「地上の旅人」には、地に生きるには向かない魂が、なぜか地に生れ落ちて艱難をなめ、早々と地上から去ってゆく、といった意味が込められている。
 読んだ当初は、これは自分のことだ、と思って読んだのだった。けれども、それ以後30年以上も、「地上」にしがみ付いているというのも、やるべきことが残っている、と思ったからだ。
 
 "Si j'etais vous ..."に戻るが、作者序文によると、主人公はなぜか「他の人間になる」という能力を得て、次々に色んな人間になってみる、というのがあらすじだという。
 ところが、十数頁読み進めても、まだ主人公である作家志望の事務員が帰宅して、夜空をしばらく眺めて、一日を振り返り、突然「悪魔とのランデヴー」という小説を書き出し、夜11時になると来訪者を待って門の外まで出て思いにふけり‥‥
 という具合に、主人公の心象風景の描写に終始して、動きがない。会話も一切ない。主人公の独白の連続なのだ。そういえば、昔の心理小説はたいてい、こんな感じだったなと思うと、なんだかなつかしい。
 ところがこれでけっこう、どんどん物語の中に引きこまれていってしまう。日本語だったらスラスラ字面ばかりを追ってかえって、内面に入り込めず、投げ出していたところだったかもしれない。辞書をひきながら原書で読むことで、かえって入り込めているのかもしれない。
 ともあれ、まだストーリに動きのない段階だが、何か変化があったらまた報告したい。
■コーンスタム著『(仮題)ヨーロッパの子どもの〈自己〉との出会い:自我体験の心理学』(渡辺恒夫・高石恭子(共訳)、金子書房)の出版が、来年2月に延びるらしい。
:
 書き忘れたが、ジュリアン・グリーンなどというカトリックの作家への興味が復活したのは、ひとえに、上記の訳業の中で、ジュリアン・グリーンの幼少期の別の自我体験の事例がこの本に載っているのに出会ったからだった。その縁で、日本でも全集が出ているのを知った。しかし、奇妙なことに、全集と銘打っているわりには、この、"Si j'etais vous ..."が収録されていないのだが。
 それはともあれ、オランダ人心理学者コーンスタム著の表記の訳本は、予想より遅れて、来年2月か3月の出版となったことを、先月、共訳者の高石さんと担当編集者と三人で初顔合わせをして、初めて知った。
 その席、原著の表紙が気に入っているので、訳本にも使えないか提案してみたが、版権の関係で無理らしい。でも、良い表紙なので、ここにアップロードしておきたい

「cover.pdf」をダウンロード

+++【お願いェブサイトにも著作権があります!引用の際はこのウェブの著者名:渡辺恒夫を明記の上、このURL名も必ず併記して下さい。+++

« 夢の現象学(87)/フッサール心理学(30):また空中歩行したの巻/フッサール他者論から可能世界論への巻 | トップページ | 夢の現象学(88):今朝見た夢は現実世界の平行宇宙に似ていたの巻 »

哲学」カテゴリの記事

心理学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/501358/61994335

この記事へのトラックバック一覧です: フッサール心理学(31):ジュリアン・グリーンの異色作 "Si j'etais vous ..."(もしも私があなただったら)の序文に幼少期の自我体験を見つけたの巻:

« 夢の現象学(87)/フッサール心理学(30):また空中歩行したの巻/フッサール他者論から可能世界論への巻 | トップページ | 夢の現象学(88):今朝見た夢は現実世界の平行宇宙に似ていたの巻 »

電子ジャーナル:こころの科学とエピステモロジー

ブログの主の最新刊

無料ブログはココログ
2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

人文死生学研究会