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2010年7月 4日 (日)

夢の現象学(27):45年前の自分がいる世界を思考実験したの巻

■「みかん投げ」ボディワークを夢の中で考案するの巻。

 その日は明け方に夢を見た。ベットサイドのノートに「みかん投げ」とだけ、メモしておいた。それから一週間近く。キーワード式夢想起法の威力で、みかん投げと言うだけで、夢の肝心な部分を思い出すことができる。
 私は、大学1、2年生の頃の、私自身が生きていた世界(京都盆地)を、基盤の上に作られた模型の町のようにして見下ろしているのだった。その頃、私は、京都で一人暮らしをしていて、これといった友人もいず、会話というものをしない毎日を送っていた(食堂での「カレー」といった注文の声は会話から除外するとして)。会話無しの連続最高記録は、23日だったと憶えている。
 こんなことにならないように、純粋の研究者の視線と化した私は、「みかんお手玉」という「ボディワーク」(?)を考案し、実践しようとしていた。両手にミカンを2つずつ持って、同時に投げて反対側の手で受け止めるというお手玉だった。難しそうだが、やっているうちにうまくできるようになった。この、ボディワークとも作業療法ともつかない方法で、大学1、2年生の頃の私のひどいコミュニケーション不全(その頃は対人恐怖と自分で呼んでいたが、今なら回避性人格障害かSAD(社会不安障害)の名がついただろう)も改善される筈なのだった。
 現在の、心理学者としての私が、40年以上前の世界を巨人のように見下ろし、若い頃の私自身に、ミカンお手玉という奇妙な心理療法を試みようとしているのだった。あとは憶えていない。

■夢は思考実験の映像化であるの巻

 目が醒めて思ったのは、これは、思考や概念作用を、映像化したものだなァ、ということだ。

 思い起こすのは、ある現象学者に最近もらった手紙だ。5月末に『人はなぜ夢を見るのか:夢科学四千年の問いと答え』(化学同人)を出版したが、出版社が硬派の理科系出版社なので、このままでは、終章の「夢の現象学」を本当に読んで欲しい哲学や文学系の読者には知られないままになってしまう。そういう懸念から、「世界としての夢」の訳者である京都在住の現象学者に、一面識もないにもかかわらず、出版社を通じてお送りしてみた。思いがけないことに、丁寧な返事と感想の手紙をいただいた(面識のない相手に本を送りつけて返事を貰うというのは、普通は期待できないことである。私自身、人から本を贈られても、申し訳ないと思いながら礼状を出さないことが少なくない)。
 その中で、夢の中の視覚的映像とは、「意味」という概念のもつ機能に近いようなものが優勢なのではないか、と述べていられるのが印象に残った。つまり、抽象的概念的意味が視覚化したのが夢の中の映像ではないか、ということだ。
 この夢などその典型のようなものだ。心理学者としての私は、巨人の視線と化して、若い頃の私が住む京都の盆地を、碁盤の上のように見下ろし、過去の私自身を、実験的な治療的実践の対象にしようとしていたのだ。まさに、思考実験の視覚化映像化である。けれども、それが、ミカンお手玉療法というのでは、苦笑するばかりだ。いったいどこからそんな奇妙なアイデアが湧いて出たのか。
 ボディーワークということで連想できるのは、最近一週間ごとに、学内での太極拳講座に通っていることだろう。ミカンお手玉には連想がまったくない。脳生理学的な可能性として、レム睡眠中のPGO波によってたまたま刺激されて出てきたミカンとお手玉を、脳が、SADの治療という思考実験と辻褄があうように解釈・変形して、挿入したのかもしれない。
 ■この夢は、45年前の若い私の惨めなコミュニケーション不全状態への治療法の考案だ。

 もちろん、この思考実験は、「もしも何らかのボディワークがあれば、45年前の私も惨めなコミュニケーション不全の状態から救われたのではないか」という、反事実条件法過去形の現在化である。けれども、この現在化・現前化は、どうやら、脳幹で発生するPGO波の刺激によってたまたま出てきたイメージを利用して、実現するらしいのだ。別の言い方をすれば、PGO波の刺激でたまたま生じたイメージに意味という息を吹き込むのが、反実仮想的な思考実験である、ということになるだろうか。2010年7月3日深夜。

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