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2007年12月 8日 (土)

他者の非存在を生きた謎の作家、森万紀子

2007年11月19日

 こ の前、森万紀子の初期作品、『単独者』『密約』(角川書店「女性作家シリーズ12」に掲載)を読んだ。この作家のものはほとんど読んでいるが、なぜか最初期のこの2作だけは未見だったので、偶然図書館で見つけて、さっそく借り出してきたたのだった。「単独者」という処女作のこのタイトルほど、森万紀子にふさわし題名はない。

 この特異な作家に出会ったのは、30年以上も前、大学院生だった頃、芥川賞候補作として、『黄色い娼婦』が文芸春秋誌に載ったのを偶然読んだ時のことだった。

 その後、中篇「残骸の街」や評論集『風の吹く町』を読むにいたって、この作家こそ、他者の非存在を生きた日本で最初の作家ではないかという気がしてきた(外国ではたぶん、カフカがいる)。

 そこで、1989年に出した『トランスジェンダーの文化』(勁草書房)の中の、「私にとって幻想文学とは何か」という一章の中に、森万紀子論(?)を織り込んでおいた。

 ところがそれから何年かして、別冊文芸春秋に、「謎の作家、森万紀子の死」という記事が掲載されたのを、これまた偶然に発見して、衝撃を受けた。記事の筆者で作家の高橋光子さんには、記事の感想に添えて勝手ながら拙著『トランスジェンダーの文化』(渡辺恒夫、勁草書房、1989)をお送りさせていただいた。丁寧な返事が返ってきた。今でも、この部屋の隅の書棚の一隅に、雑誌とお手紙がしまってある。

 それから15年。その間、「自我体験・独我論的体験研究」を通じて、他者の非存在を確信するにいたった私にとって、他者の非存在を生きる世界を描き出した稀有の作家、森万紀子の存在はますますかけがえがない。これから、折に触れて、あまり知る人もいないこの作家の作品について、紹介してゆこう。

 2年まえ、森万紀子の生地であり、泉鏡花賞受賞作『雪女』の舞台ともなった、山形県酒田市を、科学基礎論学会で訪れ、最上川を見た。初夏でもあり、作品にあるように降りしきる雪の街中に河鳴りがとどろいているようなことはなく、おそらくは文学的イマジネーションと分かったのだが、感慨があった。最上川の対岸にキャンパスを展開している東北公益大学での学会講演タイトルが「子供の独我論的体験の構造分析」だったのも、何かの縁だろうか。駅から大学へ行く途中にかかっていた橋から眺めた最上川の風景を掲載しておく。

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コメント

私は森先生のお生まれになった酒田に住んでいるものです。
ぜひ冬の酒田にもう一度いらして、最上川や海に立って見てください。
森先生の書かれた雪女の情景が見られることだと思います。

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